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​刑事事件2

4 起訴 

 検察官は,捜査で得られた様々な資料を基に,起訴不起訴などの判断を下します。公訴を提起することができるのは原則として検察官です(起訴独占主義,247条)。公訴の提起は,被告人の防御権の確保や手続の明確化の見地から,起訴状を提出してしなければなりません。

 

 起訴状には,①被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項,②公訴事実,③罪名などの事項が記載され,裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付し,またはその内容を引用してはいけません(起訴状一本主義,256条6項)。


 検察官は,被疑者に犯罪の嫌疑があって証拠も揃っており,処罰の必要があれば起訴することになります。検察官は,犯人の性格,年齢および境遇犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができます(起訴便宜主義,248条)。

 逮捕・勾留された場合に弁護士にご依頼していただきますと,弁護士は,逮捕・勾留された被疑者の弁護人として,身柄拘束からの早期の解放不起訴処分の獲得を目標として弁護活動を行います。また、公訴の提起後には、保釈の請求をすることができるようになります。

 


5 公判手続 


 検察官が裁判所に起訴状を提出し,審理および有罪判決を求める公訴の提起により公判手続が始まります。公判手続においては,被疑者(犯人と疑われる起訴される前の者)は被告人(起訴された者)となります。
 

 裁判所での審理の流れは,基本的には①冒頭手続→②証拠調べ→③弁論手続→④判決となります。


(1)冒頭手続 

 ①冒頭手続では,まず,被告人が人違いでないことを確認し(人定質問),検察官が起訴状を朗読(291条1項)します。次いで,裁判長が被告人に対して黙秘権等の権利の告知をし,被告人および弁護人に対して事件について陳述する機会が与えられます(291条4項)。

(2)証拠調べ手続 


 ②証拠調べ手続は,冒頭陳述→証拠調べの請求・決定→証拠の取調べ,の順で行われるのが通常です。


 まず,証拠調べのはじめに,検察官が証拠により証明すべき事実を明らかにします(冒頭陳述,296条)。刑事裁判では,無罪推定の原則から,被告人が犯罪を犯したことについて,検察官が証明する必要があり,被告人が無罪を積極的に証明する必要はありません。


 どの証拠を取り調べるかの判断は,基本的には当事者に委ねられているため,当事者が証拠調べの請求をし(298条1項),それに対して裁判所が証拠の採否の決定をします(刑事訴訟規則190条)。


 証拠調べ手続の最後には,証拠書類や証拠物の取調べ証人尋問被告人質問などが行われます。

(3)論告、弁論、最終陳述 


 ③弁論手続は,通常,検察官による論告・求刑→弁護人による弁論→被告人による最終陳述,の順番に行われます。論告とは,検察官による事実および法律の適用についての意見の陳述です(293条1項)。具体的な刑の量定についての意見を求刑といいます。被告人および弁護人も意見を陳述することができ,最終陳述最終弁論といいます(293条2項)。

 

(4)判決 
 

 ④判決は,公判廷において宣告により告知されます(342条)。犯罪の証明がないときは,無罪の判決をしなければなりません(336条)。有罪判決を言い渡す場合には,罪となるべき事実証拠の標目および法令の適用を示さなければなりません(335条1項)。


 各犯罪の刑罰の重さは,法律で上限と下限が定められています(例えば,殺人罪の場合ですと「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」です。)ので,基本的にはその枠の中で犯行の事情(動機,犯行態様,結果の重大性など)や情状(被害弁償,反省の程度,再犯の可能性,前科の有無など)が考慮されて決まります。

(5)弁護人の活動 

 弁護人は,公訴を提起された後は,被告人の身柄の開放のために保釈の請求をすることができます。また、被告人の刑罰が不当に重くならないようにしたり,無罪判決執行猶予付き判決を求めたりするなど,被告人の利益のために弁護活動を行います。

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