
江戸川区小岩の弁護士事務所
破産
1 破産とは
破産とは,裁判所を利用して支払不能または債務超過にある債務者の財産を清算して債務者の経済生活の再生の機会を確保するための手続です(破産法1条,2条1項)。
個人の債務者による破産手続の最終的な目標は,債務者が免責されることにあります(248条以下)。免責とは,債務の全部または一部について債務者の責任を免れることで,簡単にいえば債務を帳消しにしてもらうことです(例外として非免責債権があります(253条1項)。)。
支払不能の状態にある債務者の場合,その有する財産を換価して債権者に配当をして清算したとしても債務が残存してしまうことの方が圧倒的に多いと思われますので,債務者が免責されてその債務を帳消しにされることにより,経済的な再出発が可能となります。
破産手続が終了しても残存した債務が自動的に免除されるわけではありませんので,個人の破産の申立てをする場合には,破産手続開始の申立てと免責許可の申立てを同時に行うことが一般的です。
なお,破産をすることで,戸籍や免許証に破産の事実が載ったり,選挙権や被選挙権を失うなどということはありませんし,家財道具を一切合切持っていかれてしまうなどということもありません。
弁護士に破産事件を依頼する場合には,弁護士は債務者の申立代理人という立場で裁判所に対して破産手続および免責許可の申立てを代理することになります。
2 破産手続の流れ
まずは,事務所にお越しいただき,職業・年齢・家族構成などの生活状況,収入・支出・資産・負債などの経済状況,債権者に関する事項,借金をした理由・債務が増大した経緯などのこれまでの経緯などについて伺い,それらを基にどのような債務整理をすべきか(破産か任意整理かなど)弁護士がアドバイスいたします。
弁護士に依頼するということになれば,弁護士の方で委任契約のために必要な委任契約書と事件処理に必要な委任状を用意しますので,弁護士との間で契約を締結します。
契約を締結したら弁護士が債務者の代理人として各債権者に対して受任通知を送付します。受任通知には,①弁護士が代理人となり連絡窓口になったこと,②債務整理を行うこと,③取引履歴の開示を求めることなどが記載されており,受任通知を送付するとほとんどの債権者の取り立て行為は止まります。
債権者が取引履歴を開示したら,利息制限法に基づく引き直し計算を行い,正確な債務金額を算出します。過払金が発生している場合には,債権者に対して返還を求めます。
裁判所に破産の申立てをする際には,申立書とともに債権者一覧表・資産目録・陳述書(報告書)・申立て直前の2か月分の家計簿などを作成し,様々な資料を添付する必要があります。例えば,破産者の住所を明らかにする住民票や資産・収入を明らかにする資料(預貯金通帳,給与明細・確定申告書の控えなど)などです。これらの資料の入手については,ご協力いただくこともありますのでお願いいたします。
陳述書(報告書)には,職歴や住居の状況,破産申立てに至った事情(債務発生・増大の原因,支払不能に至る経過・支払不能となった時期など),免責不許可事由に関する事情などを記載します。
破産者の住所地を管轄する地方裁判所に対して破産の申立てをし(破産法18条),支払不能(債務者が,支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます。2条11項)の状態にあると認められれば,裁判所により破産手続開始決定がなされます(30条、15条1項)。
破産手続開始決定がされたことについては,裁判所から債権者一覧表に記載された各債権者に対して通知され,官報で公告されます。また,破産手続開始の決定により,免責許可の決定が確定するまで資格取得の制限を受け,一定の仕事に就けない場合があります。
通常の破産手続は,破産手続開始の決定と同時に破産管財人という立場の弁護士を裁判所が選任し(31葉1項),その後,破産管財人が破産者の財産である破産財団を管理し,売却したりするなどして換価し,債権者に債権額に応じて公平に配当を実施して(193条以下)破産者の債務を清算するという流れになります(「管財事件」といいます。)。
これに対して,破産者の財産が破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときには,破産管財人の選任などをせずに,破産手続開始の決定と同時に,破産手続廃止の決定がなされる場合もあります(「同時廃止事件」といいます(216条1項)。)。破産管財人の報酬は破産手続の費用となります。
東京地方裁判所では,原則として破産手続開始決定時に破産者が20万円を超える財産(現金は33万円以上)を有しているかどうかによって管財事件となるか同時廃止事件となるかを振り分けています。
管財事件とされた場合には,手続費用として最低20万円(東京地裁の場合)を裁判所に対して予納しなければなりません。そして,債務者が破産手続開始決定時に所有していた一定の財産の管理処分権が破産管財人に移り,不動産などの経済的価値が大きい財産を有していたときには,破産管財人がこれらの財産を売却するなどして換価して債権者に分配(配当)します。
また,破産管財人が破産者の財産状態や借金をした理由などを調査するために,破産者宛ての郵便物が一定期間破産管財人宛てに転送されることとなったり,破産者は,破産に関し必要な説明をする義務(40条)や,不動産などの重要財産の開示義務(41条)を負います。これらの義務に違反したときには,処罰されることがあったり(268条,269条),免責の許可がされなくなったり(252条1項11号)してしまいますのでご注意ください。
同時廃止事件の場合には,債務者の財産が破産手続の費用にすら不足するので,債務者の財産を換価したり,債権者に配当する手続を経ることなく免責の手続になります。
3 免責手続の流れ
債務者が債務の返済を免れるには,裁判所の免責許可決定を受ける必要があります。免責許可の申立ては,通常,破産手続開始の申立てと同時に行われます。免責許可の申立てがされた場合,裁判所は債権者や管財人の意見を聴くなどして免責を許可すべきか審理し,免責を許可すべきかの判断を下します。
債権者を害する目的で財産の隠匿などの破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたり,浪費や賭博などによって著しく財産を減少させたりするなどの252条1項に定める事由がない場合に免責許可の決定がなされます。免責許可の決定が確定した日から7年以内の免責許可の申立ては,免責不許可事由とされていますのでご注意ください。もっとも,免責不許可事由があるからといって必ず免責が許可されないというものではなく,免責不許可事由があっても裁判所の裁量により免責が許可される場合があります。
個人の破産者は,裁判所の免責許可決定により,破産債権についての責任を免れます。ただし,租税等の請求権や破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権などについては,責任を免れることはできません(253条1項)。
破産者に保証人がいる場合,破産者は免責によって破産債権について責任を免れることができますが,保証人の破産者に代わって債権者に弁済する義務は存続し,債権者から保証人に対して請求されることになります。破産の申立てをする場合には,保証人が債権者に対応することができるように事前に保証人に相談しておくのがよろしいかと思います。
上記のとおり,破産者が財産を隠匿したり,浪費または賭博によって財産を減少させたりした場合などには免責が認められないこともありますが,そのような行為があっても免責が認められる場合もあります(裁量免責,252条2項)ので,破産申立てをご希望の方はまずは一度弁護士にご相談ください。